渋川北群馬歯科医師会

がん等に係る全身麻酔による手術又は放射線治療、化学療法若しくは緩和ケアを実施する患者様への当会としての取り組み

 現在、がん等に係る手術・放射線療法・化学療法若しくは緩和ケア並びに在宅医療等におきまして、患者様の心身の負担を可及的に低減するための医科歯科連携が推進されています。
 当渋川北群馬歯科医師会としましても、渋川医療センターや前橋日赤病院等、医科医療機関と連携をしまして、周術期口腔機能管理を実施しております。
 以下に『日本医師会雑誌』第144号・第3号(平成27年6月1日発行)特集「日常診療に必要な口腔ケアの知識」論文「がん化学療法・放射線治療と口腔ケア」(著者;百合草 健圭志 先生)と西群馬病院(現渋川医療センター)発刊の機関誌に掲載をいたしました当会会長と副会長の寄稿文の抜粋を載せましたのでご参照ください。

がん化学療法・放射線治療と口腔ケア

「周術期口腔機能管理についての展望」

 近年、がん患者の増加に伴い、がん患者の周術期、化学療法や放射線治療などの治療期における口腔機能管理(口腔ケア)をがん治療の標準的治療の一環として導入していくことが求められています。周知のとおり、周術期に口腔ケアを行うことにより術後感染症などの合併症の予防や減少につながり、在院期間の短縮になることが報告されています。また、化学療法と放射線治療による口腔粘膜炎は、物が食べられなくなり、体力の低下から治癒も遅くなることもあります。さらには、その痛みの苦痛からがん治療そのものの治療スケジュールの変更や中断を余儀なくされてしまうこともでてきますが、手術前や治療前からの一貫した口腔管理を行うことで口腔粘膜炎を軽減できることが報告されています。
 こうしたことから、2012年度の診療報酬改訂で、歯科の医学管理に「周術期口腔機能管理料」が制定され、さらに、今回の2014年度の改訂では、個別の診療報酬改訂項目の重点課題として、「周術期における口腔機能の管理等、医療機関相互の連携」があげられ、医科点数にも反映されました。
 私たち渋川北群馬歯科医師会では、周術期口腔機能管理に対して、がん治療等に支援できるよう「周術期口腔機能管理対応協力医制度」を制定しました。歯科医師が行う専門的口腔ケアの基本は、歯石除去(スケーリング)や専門的な歯口清掃です。また、患者様それぞれの口腔ケアに方法を評価し、適切な方法を支援していき、口腔粘膜炎の発症誘因を処置し、口腔内合併症にも対処し、がん治療をサポートします。
 こうした医科歯科連携を図り地域住民の皆様が安心してがん治療を受けられるよう、私たち歯科医師会でもこうした体制で周術期口腔機能管理が必要な患者さんに対しては支援し、「口から自然な形で美味しく食べられること」を目指して、患者の方々のがん治療に対してお手伝いしていきたいと思います。

「お口の中の細菌は全身を駆け巡る」

 お口の病気はお口の中だけのものとお考えの方が多いのではないでしょうか。お口の中 は全身の中で細菌の数も種類も一番多い場所なのです。お口の病気の代表的なものとして歯周病があります。読んで字のごとく歯の周囲の病気です。歯周病は歯の周りの組織であるハグキ(歯肉)、ホネ(歯槽骨)などに発生する病気で、細菌によって引き起こされる感染症です。
 歯の周囲に細菌が定着すると歯肉に炎症が起こり歯を支えている歯槽骨が破壊されていくだけでなく、歯と歯肉の間で爆発的に増えた細菌が歯肉から血管に侵入し全身を駆け巡ることになり、全身の病気の発症や悪化に大きな影響を与えます。近年歯周病が全身に及ぼす影響、また全身の病気が歯周病に与える影響が分かってきました。代表的なものは糖尿病、誤嚥性肺炎、虚血性心疾患、感染性心内膜炎、骨粗しょう症、低体重児出産などです。
 これらの病気以外でも現在日本人の二人に一人はがんにかかる時代です。そのがん治療をスムーズに進め、早期に日常生活に復帰できるようにするためには感染症対策は必須要件となります。その感染症を引き起こす細菌の多くがお口の中にいるわけです。日頃からかかりつけ歯科医院にてお口のケアを実施し、お口の中の細菌を少なくしておくことが、来るがん治療に支障をきたさないための対策と言えます。
 私たち渋川北群馬歯科医師会では歯科治療を含めた口腔ケアを通してがん治療だけでなく、先に挙げた全身疾患の予防と治療のお手伝いができるよう研修を重ね、地域の方々の健康増進を支援できるよう日々の診療に従事しております。今後とも宜しくお願いします。