フッ化物利用 ~特にフッ化物洗口について~ むし歯の予防には、丁寧な歯みがきで歯垢を除去すること、歯垢の元になる甘い飲食物を控えること、そして忘れてはいけないのがフッ化物の利用により歯の質を強くすることです。 |
フッ化物応用対応歯科医療機関一覧平成29年12月現在 |
フッ化物洗口
一定濃度のフッ化ナトリウム溶液(5-10ml)を用いて、1分間ブクブクうがいを行う方法で、永久歯のむし歯予防手段として有効です。第一大臼歯の萌出時期(就学前)にあわせて開始し中学生まで続けます。保育園・幼稚園・小中学校で集団実施されていますが、個人的に家庭で行う方法もあります。
フッ化物洗口
フッ化物洗口(FMR)は、永久歯のむし歯予防を目的に一定の濃度のフッ化ナトリウムを含む溶液で1分間ぶくぶくうがいをする方法です。
フッ化物洗口の実際
1. 洗口頻度と使用する薬剤の濃度
保育園・幼稚園・小中学校で集団として行う場合、週5回法と週1回法があります。週5回法では0.05%フッ化ナトリウム溶液(フッ化物イオン濃度225ppm)、週1回法では0.2%フッ化ナトリウム溶液(同900ppm)を用います。週5回法は主に保育・幼稚園で採用されています。
なお家庭では、市販の洗口剤(ミラノール®、オラブリス®:フッ化物イオン濃度250ppm)を用いて毎日行います。
2. 洗口液の量と洗口時間
1回の洗口液の量は、就学前の幼児では5~7ml、小学生以上では10mlです。洗口時間は1分間で、砂時計を見ながらあるいは音楽に合わせて行います。なお就学前の幼児では、真水による「ぶくぶくうがい」と吐き出しの練習をして、上手にできることを確認してから洗口液に切り替えます。
3. 洗口後の注意
洗口後30分間は飲食・うがいを控えます。保育園では午睡の前に、幼稚園や小中学校では授業の直前に実施されています。家庭では就寝前の歯磨きの後が適切です。
フッ化物洗口の予防効果
報告によれば、むし歯予防効果は約30~80%です。第一大臼歯の萌出時期に合わせた開始と長期間継続することが効果を確かにするために必要です。またこの獲得した効果は洗口終了後も持続しています。また成人においても隣接面むし歯や根面むし歯の予防に効果的です。
1. 就学前からのフッ化物洗口の有効性
予防効果に関する論文を開始年齢によって分類すると、小学校入学後(6歳)の実施群の31~49%に対し、就学前4歳児から実施した群では、54%~77%と、就学前からの実施で高い予防効果を得ることができます。
2. フッ化物洗口終了後の予防効果の持続
施設単位で行われるフッ化物洗口は、中学校卒業で終了します。終了後のむし歯有病状況を、洗口を経験しなかった群と比較すると、高校生では56%と83%、20歳では54%の予防効果が報告されています。歯は、成熟にともない、むし歯抵抗性を獲得します。未成熟な時期にむし歯罹患を免れたことが理由です。
フッ化物洗口の安全性:1回の洗口での口腔内フッ化物残留量
保育園児の洗口後の口腔内残留率は約10%です。週5回法の場合約0.2mgのフッ化物が口腔内に残ります。この量はフッ化物錠剤の投与基準量の0.5mg/日(3-6歳児)の半分以下で、お茶をコップ1~1.5杯飲んだときに摂取するフッ化物の量に相当します。また就学前児(体重20kg)が1回分の洗口液を全量(7ml中のフッ化物量は1.6mg)誤って飲んだとしても、急性中毒の心配はありません。
フッ化物洗口の普及状況
2012年度の調査(NPO法人日本むし歯予防フッ素推進会議・財団法人8020推進財団・WHO口腔保健協力センターの共同調査)では全国の約8,000施設で約89万人が実施しています。歯科医院での指導により家庭で実施している小児(園児~中学生)は約35万人と推計されています(2002年調査)。世界的にみると約1億人の小児がフッ化物洗口を実施しています。
前 新潟大学大学院 医歯学総合研究科 口腔生命福祉学講座 佐久間 汐子
参考文献
- 日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会 編
フッ化物ではじめるむし歯予防
医歯薬出版, 2006. - NPO法人日本むし歯予防フッ素推進会議 偏
日本におけるフッ化物製剤
口腔保健協会, 2013.
【厚生労働省『e-ヘルスネット情報提供』より】