渋川北群馬歯科医師会
カテゴリー:コラム

小児の歯の外傷

2009年09月10日

 小児の歯が傷を受ける原因には、幼児期では運動能力の未発達さに起因している歩行時の室内での転倒が多く、さらに行動範囲が広がる学童期では屋外での乗り物からの転落やスポーツ、遊戯中の転倒や衝突が多くなります。

 歯の外傷を理解するうえで、歯のなりたち(解剖)をまず理解しておきましょう。

 私たちが 普段「歯」と呼んでいるところは、歯ぐきから顔を出している歯冠部と、歯ぐきの下の歯根部からなります。

 歯根は歯槽骨(歯根の周りを囲む骨)によって固定されていますが、歯根の周囲には歯根膜という薄いけれども、しっかりとした組織が付いています。 これは歯根を歯槽骨に連結する役目と硬い物をかんだ時の力を吸収するという重要な役目を任っています。

 歯冠部の表層はエナメル質、その下の層は象牙質で歯根部へとつながっています。歯冠部と歯根部の象牙質の中心には歯髄(歯の神経とよばれる部分)となっています。

 

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 さて、歯のけがの種類には破折、脱きゅう、埋入、歯槽骨骨折がありますが、受傷の頻度が多い破折、脱きゅうについてお話ししましょう。

 歯の破折は外力の方向によって色々の部位で折れますが、最も多いのは歯冠破折で歯髄が露出した場合は歯髄処置をしてから歯冠部の修復をします。また目で見えない歯根部も破折していることもあります。

 歯の脱きゅうは歯根膜の断裂により、歯が骨から離れる状態をいいます。もとの位置に整復固定して経過を観察します。外力が強すぎて歯が抜け落ちてしまった場合には、歯根に付いている歯根膜が乾燥しないように牛乳や生理食塩水など体液に近い液体に浸し、すみやかに受診します。

 小児の外傷の処置後は、どのケースでも長期間の経過観察が必要です。